11. 狂言の特殊な演出(1)

 

狂言師は阿修羅像

奈良・興福寺の「阿修羅像」を見たことがありますか。顔が三つに手が六本。顔の表情が三面三様ならば、腕の形も違っています。三つの顔は正面と左右を向いており、それぞれの顔が見ている眼前の世界は同時であっても、それぞれ違っています。例えば、正面は神社の本殿ならば、右の顔はその裏山であったりとか、左の顔は門前の市なのかも知れません。狂言の演じ手もこれと同じような「つもり」で演じています。一方、観客の方もこの役者の「つもり」を想像しなければなりません。役者と観客が舞台に同じ「つもり」を感じた時、名役者と名観客の出現であります。