9. 能舞台の秘密(9)

 

床と床下

舞台の床は、長さ3間の桧の厚板を舞台の先端から後座まで、縦に並べて張られている。役者は舞台上を移動する際、スリ足を用いるので、床材の桧は滑らかに削り、床束を用いず根太の上に渡して、釘を使わず楔で止め、床全体に弾力性を持たせ、舞いやすく演じやすくする工夫が凝らされている。桧で作られた能舞台だから、世間が認めた華やかな場を「桧舞台」と呼ぶようになったのです。

また、床下の土間には9個の穴を掘り、素焼きの大きい壷を据えて、役者の足拍子等の音響効果に役立てようとしたのも、先人たちの努力の結晶でありますが、最近の舞台では「こんなことをしなくても音響装置で十分にクリア出来る」として、壷を据えない舞台が続出しています。なるほど現代の音響装置は、客席には十分の効果があるかも知れませんが、足拍子を踏んだ役者には、反響が伝わらないのであります。この反響が役者に伝わった時に、「壷にあたった」とか「思う壷」などの謂れとなった満足感が役者に生まれるのであります。

このように能舞台には、現代社会で使われている言葉の謂れが、隠されているのです。